株主優待の廃止は増配とセットで来る|13年61件の記録

株主優待は13年で61回変わった 廃止8件のうち4件は増配と同時に発表
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株主優待が目的で買った株を、いちばん古いもので14年持っています。その間に何度も届いたのが「株主優待制度の変更に関するお知らせ」という文書でした。

優待は変わるものだ、というのは経験として分かっています。ただ実際どのくらいの頻度で、どちらの方向に変わるのかは数えたことがありませんでした。

そこで、いま持っている51銘柄すべてについて、会社が出した優待関連の開示を2013年までさかのぼって数えてみました。結果は13年で61件。そして、廃止のされ方には、はっきりした特徴がありました。

この記事の要点

  • 13年間で61件の制度変更があった。保有51銘柄のうち23銘柄で何かが動いている
  • 内訳は拡充12件・廃止8件優待は減る方向にだけ動くわけではない
  • 廃止8件のうち4件は「増配」と同じ開示で発表されていた。優待をやめて配当に回す、という形
  • 自分が株主のときに優待が消えたのは3件(JFLA・東急不動産HDの一部・東京センチュリー)
  • 優待が消えても受け取る金額が減るとは限らない。東京センチュリーは優待廃止と同時に増配し、その後も増えている
  • 結論:優待だけを理由に買わない。ただし「改悪が怖いから優待銘柄を避ける」も違うと思っている

13年で61回、「変更のお知らせ」が届いた

保有51銘柄に届いた株主優待の変更件数 2013年から2026年8月までの年別グラフ
保有51銘柄の適時開示(IRBANK)をもとに筆者作成。毎年の定期案内は除いた制度変更の件数

2013年から2026年8月までの13年間で、61件ありました。1年も欠けることなく、毎年どこかの会社が優待の制度を動かしています

色を変えた2020〜2022年が多いのはコロナの影響です。ただしこの時期の多くは「有効期限の延長」で、株主にとってはありがたい変更でした。あとで詳しく書きます。

数え方

あとから検証できるように、数え方を書いておきます。

  • 対象は2026年8月時点で私が保有している51銘柄。過去に売った銘柄は含めていません
  • 出典はIRBANKに載っている各社の適時開示。IRBANKに開示が載っているのが2013年秋以降なので、集計期間は2013年〜2026年8月
  • タイトルに「変更/拡充/廃止/見送り/新設/導入/延長/改定」を含むものを数えました
  • 毎年出る「株主優待のご案内」のような定期的な通知は除外しています(33件ありました)

51銘柄のうち、13年間で一度でも制度が動いたのは23銘柄でした。残りの28銘柄は、そもそも優待がないか、一度も変えていない会社です。

内訳|減る方向にだけ動くわけではない

株主優待の変更61件の内訳 拡充12件・廃止8件・有効期限の延長11件などの内訳グラフ
同じ61件を内容で分類したもの。筆者作成
内容件数中身
その他の変更17件対象商品の入れ替え、基準日の変更など
拡充12件金額や回数、対象が増えた
有効期限の延長11件ほぼコロナ期。使えない期間への対応
廃止8件制度そのものがなくなった(一部廃止を含む)
株式分割にともなう変更7件分割にあわせて必要株数などを調整
新しく作られた6件優待がなかった会社が新設した

意外だったのは、「拡充」12件が「廃止」8件より多いことでした。優待というと「改悪される」という話ばかり目にしますが、自分の保有株に限って言えば、増える方向の変更のほうが多かったことになります。

「新しく作られた」も6件あります。優待がなかった会社が始めることもあるので、制度全体がなくなる方向に進んでいるわけではありません

いちばんはっきりした特徴|廃止は「増配」とセットで来る

数えていて手が止まったのがここです。廃止8件のうち4件が、増配と同じ開示で発表されていました。開示のタイトルを並べます。

発表日会社開示のタイトル
2022年8月5日丸井グループ株主優待制度の廃止ならびに2023年3月期配当予想の修正(特別配当の実施)に関するお知らせ
2023年5月15日学究社剰余金の配当(増配)及び株主優待制度の廃止に関するお知らせ
2023年11月8日みずほリース株式分割…配当予想の修正(増配)及び株主優待制度の廃止に関するお知らせ
2025年5月14日東京センチュリー剰余金の配当(増配)及び株主優待制度の廃止に関するお知らせ

タイトルに両方書いてあります。会社側も隠していません。「優待をやめます、そのぶん配当を増やします」という説明です。

会社の立場に立つと理由は分かります。優待は品物や券なので持っている株数に比例させにくく、100株の株主にも10,000株の株主にも似た金額を配ることになりがちです。配当なら、株数に応じてすべての株主に同じ条件で渡せます

残りの4件(タナベコンサルティング・東急不動産HD・JFLA・エクシオグループ)は増配とセットではありませんでした。廃止には2種類あるということです。次でその違いを書きます。

自分が株主のときに優待が消えたのは3件

61件のうち、私が実際に株主として通知を受け取ったのは、調べた範囲で次の3件です。

① 東京センチュリー|優待は消えたが、受け取る金額は増えた

2024年6月に1,461円で買いました。その約1年後、2025年5月14日に優待の廃止が発表されます。同じ開示で、期末配当を予想の29円から33円へ増やすことも決まりました。

決算期年間配当取得単価1,461円に対する利回り
2024年3月期52円3.56%
2025年3月期(優待廃止を発表)62円4.24%
2026年3月期80円5.48%
2027年3月期(会社予想)90円6.16%

優待はなくなりましたが、配当は52円から80円へ増え、来期は90円が予想されています。受け取るものの総額でいえば、むしろ増えました

廃止イコール損、とは限らないという例です。このときは正直がっかりしましたが、いま数字で振り返るとそうでもありませんでした。

② JFLAホールディングス|こちらは何も残らなかった

2023年8月10日に「株主優待当面見送り」が出ました。こちらは増配とセットではありません。配当も出ていない会社なので、優待が消えて、受け取るものがゼロになりました

東京センチュリーとの違いは廃止の理由です。前者は「配当に回すため」、後者は「余裕がないため」。同じ廃止でも、株主にとっての意味はまったく違います。

この銘柄で何が起きていたのかはJFLA HD(3069)で-36%|13年持った株から優待も配当も消えた理由に詳しく書きました。

③ 東急不動産ホールディングス|一部だけ消えた

2022年2月25日の「株主優待制度の一部変更(廃止)」で、ハンズの商品と交換できる優待がなくなりました。理由ははっきりしていて、ハンズを2022年にカインズへ売却したからです。

事業を売ると、その事業に紐づいた優待は消えます。会社の業績とは関係のない消え方で、これは事前に読みにくい部類だと思います。

ただしこの会社は、翌年の2023年1月19日に「株主優待制度の変更(拡充)」も出しています。減った分だけではなく、増えた分もありました。経緯は東急不動産HD(3289)|優待目的で買った株が取得利回り13.3%ににまとめています。

(参考)優待が廃止されたあとに買った銘柄もある

丸井グループ・みずほリース・エクシオグループの3社は、優待が廃止されたあとに買っています

銘柄優待の廃止私が買った時期
丸井グループ2022年8月2024年1月
みずほリース2023年11月2024年6月
エクシオグループ2023年11月2024年1月

つまりこの3社は最初から配当だけを見て買っています。優待がなくなった会社が、そのぶん配当を厚くして高配当株になる。そういう入り方もある、ということです。

縮小の実例|アトムは2回に分けて4分の1になった

廃止ではないけれど、金額が減った例がアトム(7412)です。13年持っていて、2回の縮小がありました。

発表日変更の内容会社が挙げた理由
2024年5月9日優待ポイントを半分原材料価格の高騰と物価上昇による消費マインドの低下で、2024年3月期の業績が予想を下回った
2026年6月12日さらに半分に(当初の4分の1)2026年3月期に減損損失と繰延税金資産の取崩しを計上し、前回予想を下回った

※出典:アトムが公表した「株主優待制度の変更に関するお知らせ」(2024年5月9日・2026年6月12日)

注目したいのはタイミングです。2024年は、特別損失の計上と優待の変更が同じ日(5月9日)に発表されました。2026年は5月8日に特別損失の計上を発表し、優待の縮小はその約1か月後です。

順番は違いましたが、2回とも「業績が悪くなった」という開示とセットで出ている点は同じでした。優待だけが単独で減らされたことはありません。

この銘柄の記録はアトム(7412)の株主優待|13年保有で当初の4分の1になった記録にあります。

逆の例|増える会社と、変えない会社

ラウンドワンは13年で3回、すべて増やす方向

発表日内容
2013年11月8日株主優待制度の拡充
2019年3月5日株主優待制度の変更(拡充
2022年8月5日株式分割、配当予想の修正(増配)及び株主優待制度の変更

3回とも増やす方向でした。優待は年2回から年4回になっています。業績が伸びている会社は、優待も増やすという、素直な形です。

ビックカメラは12年間、金額も条件も据え置き

ビックカメラ(3048)は、13年間で優待関連の開示が1件だけでした。2014年2月19日の株式分割にともなう形式的な変更で、その開示には「実質的な贈呈基準に変更はありません」と書かれています。

つまり2014年から2026年まで据え置きです。ただしこれは、あとから見て「変わらなかった」と分かることであって、買う時点で読めるものではありません。

一度やめて、また始めた会社もある

タナベコンサルティンググループ(9644)は、2021年5月14日に優待を廃止したあと、2025年4月23日にあらためて導入しています。さらに2026年4月22日には、デジタルギフトへの変更を出しました。

なくなったら終わり、でもありません

コロナのときは、会社は延長で対応した

61件のうち11件は「有効期限の延長」で、そのほとんどが2020年から2022年に集中しています。

会社延長の回数
ANAホールディングス5回
アトム3回
丸井グループ2回
東京センチュリー1回

店や飛行機が使えない時期が続いたときに、会社は期限を延ばして対応しました。「制度の変更」と聞くと身構えますが、株主に有利な変更も同じくらいあります。この11件は、数えるまで自分でも忘れていました。

13年ぶんを数えて、考えが変わったこと

  • ①「優待は改悪される」は言いすぎだった。拡充12件・新設6件に対し、廃止は8件。減る方向にだけ動いているわけではない
  • ② 廃止には2種類ある。「配当に回すための廃止」(増配とセット・4件)と「余裕がないための廃止」。前者は受け取る金額がむしろ増えることがある
  • ③ 縮小には前ぶれがある。アトムは2回とも、業績の下方修正や特別損失の開示のあとに優待を減らした。優待の開示だけを見ていると突然に見えるが、その前に別の開示が出ている
  • ④ 事業の売却は読みにくい。東急不動産HDのハンズのように、業績と関係なく消えることもある

これから優待銘柄を買う人へ

13年ぶんを見たうえで、買う前に確認しておくといいと思うことを3つ挙げます。

  • 優待がなくなっても持ち続けられるか。これがいちばん大事だと思っています。配当や業績に納得できていれば、優待が消えても慌てずに済みます
  • その会社の優待が過去に何回変わっているか。IRBANKなどで各社の適時開示を「優待」で探せば、過去に何回変えた会社なのかがすぐ分かります。よく変える会社と、まったく変えない会社に、はっきり分かれます
  • 優待の原資がどこから出ているか。自社の店や商品で完結する優待(ビックカメラ・サンマルク)と、グループ会社の事業に紐づく優待(東急不動産HDのハンズ)では、消える理由が違います

逆に、「改悪が怖いから優待銘柄は買わない」というのは違うと思うようになりました。拡充のほうが多かったですし、廃止されても配当が増えれば受け取る金額は減りません。

まとめ

保有51銘柄に届いた優待の変更を13年ぶん数えたら、61件ありました。拡充12件、廃止8件、有効期限の延長11件、新設6件。優待は毎年どこかで動いていますが、減る方向にだけ動くわけではありません

いちばんの発見は、廃止8件のうち4件が増配と同じ開示で発表されていたことです。優待をやめて配当に回す、という流れが、自分の保有株の中でも起きていました。東京センチュリーは優待を失った代わりに、配当が52円から80円になり、来期は90円の予想です。

14年前、私は優待だけを見て株を買っていました。いまは優待は変わるものだという前提で、配当と業績のほうを先に見るようになりました。この13年ぶんの数字は、その考え方が間違っていなかったことを裏づけてくれたと思っています。

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※本記事は筆者個人の記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。件数はIRBANKに掲載された各社の適時開示をもとに筆者が集計したもので、集計方法によって数は変わります。株主優待の内容は変更されることがあります。最新の条件は必ず各社の公式サイトでご確認ください。記載の数値は2026年8月時点のものです。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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大学生の頃に金融投資を知り、社会人になるタイミングで金融投資を始める。インデックス投資を中心に資産を拡大していき、2023年に高配当株投資とFIREを知り、それをきっかけにFIREを目指すべく高配当株投資を始める。 2024年には月平均5万円の配当金を受け取れるようになり、さらなる配当金の増加に向けて尽力中。
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