保有株がTOBされたら|4回とも応募せず市場で売った理由

保有株がTOBされたら|4回とも応募せず市場で売った理由
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※当ブログの投資方針は高配当株の投資方針|13年で減配39件・優待変更61件を経験した記録をご覧ください。

この記事の要点

  • 2024年2月から2025年9月までの1年8か月で、保有株が4回TOBの対象になった
  • 4回とも、TOBに応募せず市場で売った。ただし理由は毎回同じではない
  • そのうち3回は、TOB価格より3〜4円安い値段で売っている(差は0.13〜0.26%)
  • ファンケルは待っているあいだに買付価格が2,690円→2,800円へ引き上げられた
  • 芝浦電子は2社の争奪戦になり、TOB価格が4,300円→7,130円まで上がった
  • 4銘柄のうち2つは2012年に株主優待めあてで買った株。12年持って、TOBで優待ごと消えた

1年8か月で4回、持っている株がTOBされた

TOB(株式公開買付け)は、めったにない出来事だと思っていました。ところが2024年2月から2025年9月までのあいだに、私の保有銘柄は4回その対象になっています。

50銘柄前後を長く持っていると、こういうことが起きます。1銘柄あたりの確率は低くても、銘柄数と保有年数を掛けると、それなりの回数になるということだと思います。

売却時期銘柄買付者TOB価格私の売却価格
2024年2月ベネフィット・ワン(2412)第一生命HD2,173円2,169円
2024年8月ファンケル(4921)キリンHD2,690円→2,800円2,796.5円
2025年1月ラック(3857)KDDI1,160円1,157円
2025年9月芝浦電子(6957)YAGEO(台湾)6,200円→7,130円7,070円

※TOB価格は各社の適時開示より(売却した時点の価格)。売却価格は筆者の約定単価。芝浦電子はミネベアミツミによる別のTOB(6,200円)も同時に進んでいた

4銘柄とも、その後上場廃止になっています。ベネフィット・ワンが2024年5月20日、ファンケルが2024年12月17日、ラックが2025年2月21日、芝浦電子が2026年1月9日です。

4回とも「市場で売る」を選んだ

持っている株がTOBの対象になったとき、選択肢は3つあります。TOBに応募する、市場で売る、何もせず放置する(スクイーズアウトを待つ)。この3つの違いは1回目の記事に詳しく書きました。

結果からいうと、私は4回とも市場で売っています。ただし理由は毎回同じではありませんでした。

理由①:TOBを受け付けている証券会社に口座がなかった

ベネフィット・ワンとラックは、これが理由です。

TOBに応募するには、買付者が指定した証券会社に口座を開き、そこへ株を移す必要があります。ラックのときは、その窓口がみずほ証券でした。私はSBI証券しか使っていないので、口座開設と株式移管という2つの手続きが必要になります。

その手間を避けて市場で売ると、TOB価格よりわずかに安い値段になります。市場で売った4回のうち、TOB価格を下回ったのは3回でした。その差はこうです。

銘柄TOB価格売却価格差
ベネフィット・ワン2,173円2,169円4円(0.18%)
ファンケル2,800円2,796.5円3.5円(0.13%)
ラック1,160円1,157円3円(0.26%)

3回とも0.2%前後です。1株あたり3〜4円。これが「口座を開かずに済ませ、しかも1〜2か月早く現金にする」ための費用ということになります。

安いと見るか高いと見るかは人によると思います。私は3回とも同じ判断をしました。TOBが決まった株はほぼ値動きが止まるので、待っていても得はしません。それなら早く現金にして次に回したい、という考えです。

理由②:会社が賛同していたTOBより、市場のほうが高かった(芝浦電子)

芝浦電子だけは事情がまったく違いました。買収したい会社が2社あらわれて、争奪戦になったのです。

2025年4月、会社はミネベアミツミのTOBに賛同する一方、台湾のYAGEOによるTOBには反対を表明しました。ところが5月にはYAGEOに対して「意見表明(留保)」、ミネベアミツミに対しては「賛同・応募中立」へと立場を変えています。会社自身が判断を保留するほどの状況だったということです。

その後、6月から10月にかけて両社の買付条件の変更が何度も繰り返されました。YAGEOの買付価格は、最初に公表された4,300円から4回にわたって引き上げられています。

芝浦電子のTOB価格の推移 4,300円から7,130円まで4回引き上げ
芝浦電子およびYAGEOの適時開示をもとに筆者作成

私が売ったのは2025年9月2日です。このとき、TOBは2つ並んで走っていました。

2025年9月2日時点買付者価格
会社が賛同していたTOBミネベアミツミ6,200円
会社が意見を留保していたTOBYAGEO7,130円
私が売った市場価格―7,070円

会社が賛同していたミネベアミツミの6,200円に対して、市場は7,070円。870円も高い水準でした。一方でYAGEOの7,130円と比べると、60円安いことになります。

この60円(0.84%)は、ほかの3回の0.13〜0.26%より大きい差です。理由ははっきりしていて、市場価格がTOB価格に近づいてこなかったからです。

芝浦電子の市場終値とTOB価格の推移 2025年5月から10月 売却日9月2日
終値は日次の株価データ、TOB価格は適時開示をもとに筆者作成

TOBが始まった5月から8月中旬まで、市場価格はおおむねTOB価格より2〜5%安いところで動いていました。買付価格が上がるたびに株価も上がりましたが、追いついてはいません。ほかの3銘柄では市場価格がTOB価格のすぐ下に貼りついていたので、かなり違う動きです。

YAGEOが買付価格を7,130円に引き上げたのは8月25日でした。その後の終値は、8月28日が7,000円、8月29日・9月1日・9月2日が7,070円。1週間たっても60〜130円の差が開いたままです。

背景には、YAGEOのTOBが外国為替及び外国貿易法にもとづく審査の途中で、成立するかどうかがまだ決まっていなかったことがあると思います(承認が出たのは2025年10月3日)。成立しなければ株価は元に戻るので、市場はそのぶんを差し引いた値段をつけていたことになります。

差が縮まるのを待つ手もありました。実際、終値が7,120円まで来たのは9月19日です。ただ3週間近く待って、増えるのは50円。それなら成立するかどうか分からないものを持ち続けるより、その時点の値段で売ってしまおうと考えました。

その後、ミネベアミツミは2025年9月11日にTOBを終了し、YAGEOのTOBが10月20日に成立しました。

4回の差をまとめると、こうなります。

TOB価格と売却価格の差 4銘柄 0.13%から0.84%
各社の適時開示と筆者の約定単価をもとに作成

ファンケルは「待った」ことが効いた

4回のなかで、いちばん学びが大きかったのがファンケルです。

日付できごと
2024年6月14日キリンHDがTOBを発表。買付価格2,690円。同じ日に無配への修正と株主優待の廃止も発表
2024年7月29日買付期間を8月13日まで延長。価格は据え置き
2024年8月6日買付価格を2,690円→2,800円へ引き上げ。期間も8月28日まで延長
2024年8月16日私が市場で売却(2,796.5円)
2024年9月12日TOB成立
2024年12月17日上場廃止

※ファンケルおよびキリンホールディングスの適時開示より

発表の直後、私はこう思っていました。市場価格がTOB価格の2,690円を上回っていたからです。当時、こんなことを書いています。

ファンケルのTOBが8月13日まで延長になりましたが、市場で2840円なのに、2690円でTOB申し込む人なんているんですかね…

素朴な違和感でしたが、この1週間後、キリンは買付価格を2,800円へ引き上げました。市場価格が買付価格を上回ったままでは、応募が集まらないからです。

もし発表直後の6月に慌てて売っていたら、2,690円前後で手放していたはずです。結果として、引き上げ後の水準で売れました。

ここから学んだのは、TOB価格は「決まったもの」ではないということです。買付期間は延長されることがあり、価格も動くことがあります。急いで売る理由がないなら、しばらく様子を見る価値があります。

優待目的で買った株が、12年後にTOBで消えた

ベネフィット・ワンとファンケルは、どちらも2012年に買った株です。高配当株投資を本格的に始めるより前で、買った理由は配当ではなく株主優待でした。

  • ベネフィット・ワン…福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」が個人で使えるようになる優待
  • ファンケル…6か月以上の継続保有が条件で、自社の化粧品やサプリメント、または「ファンケル銀座スクエア」の利用券がもらえる優待

どちらも毎年きちんと使っていました。そして使っているあいだ、売るという選択肢は一度も頭に浮かびませんでした。株価がいくらになっているかも、正直あまり見ていません。優待が届いて、それを使う。それだけの関係が12年続きました。

ベネフィット・ワンファンケル
取得日2012年1月5日2012年10月3日
取得単価544円916円
株式分割3回(株数は8倍に)1回(株数は2倍に)
分割を調整した取得単価68円458円
売却価格2,169円2,796.5円
保有期間12年1か月11年10か月
株価の倍率約31.9倍約6.1倍

※分割は各社の適時開示および保有株数の変化より。倍率は株価のみで、保有期間中に受け取った配当は含まない

ベネフィット・ワンは12年で約31.9倍になりました。544円で買った株が、3回の分割を経て、2,169円で売れています。分割を戻して比べると1株17,352円相当です。

この数字には12年分の配当が入っていません。配当を足した実際の成績は、これよりさらに良かったことになります。

ただ、これはうまく投資した結果ではありません。優待目的で買ったから、売る理由がなかっただけです。値上がりを狙って持ち続けたわけでも、企業価値を見抜いていたわけでもありません。もし配当や値上がりを目的に買っていたら、途中のどこかで売っていたと思います。

皮肉なことに、優待は最後に消えました。ファンケルはTOBの発表と同じ日に優待の廃止を決め、2024年3月31日を基準日とする分が最後になりました。配当も年34円から0円へ修正されています。ベネフィット・ワンのベネフィット・ステーションも、2024年5月の上場廃止で使えなくなりました。

そして最後は、自分の判断ではなく買収という外の事情で強制的に終わりました。長く持つとはそういうことでもあるのだな、というのが正直な感想です。

4回経験して分かった3つのこと

① TOBは「配当が消える」ことでもある

ファンケルは、TOBの発表と同じ日に無配への修正と株主優待の廃止を出しました。買収される会社は上場をやめるので、株主に配当を出す理由がなくなります。

株価にプレミアムが乗るので損得だけ見れば悪い話ではありません。ただ高配当株投資の立場からは、配当を生んでいた銘柄が1つ消えるということです。実際ラックのときは、同じ月にアマダを買って銘柄数を戻しました。

② 判断に必要なのは2つだけ

4回とも、見ているのは同じ2点でした。

  • TOB価格と市場価格の差はいくらか
  • TOBの窓口になっている証券会社の口座を持っているか

市場のほうが高ければ市場で売る。TOB価格のほうが高くても、窓口の口座を持っていなければ、差額を払ってでも市場で売る。私の場合、この2つで4回とも決まりました。

③ 慌てて売らなくてよい

ファンケルは価格が引き上げられ、芝浦電子は争奪戦になりました。4回のうち2回は、発表時の価格で終わっていません。

TOBが発表されると株価はすぐ買付価格の近くまで動くので、慌てる必要はありません。買付期間は1か月以上あることが多く、延長されることもあります。私はファンケルで2か月待ちました。

TOBの通知が届いたら、この順番で見る

  1. 買付価格と、いまの市場価格を比べる。市場のほうが高ければ市場で売る
  2. TOBの窓口の証券会社を確認する。口座があれば応募が有利
  3. 口座がなければ、差額と手間を比べる。私の場合は3回とも0.2%前後で、手間を選ばなかった
  4. すぐには決めない。買付期間の終盤まで、価格が変わらないか見る

1回目のときは何も分からず、届いた分厚い封筒を前に慌てて調べました。4回目になると、この順番で見るだけで終わります。

まとめ

1年8か月で4回、保有株がTOBの対象になりました。4回とも応募せず、市場で売っています。

そのうち3回は、TOB価格より3〜4円安い値段でした。差は0.2%前後です。口座を開いて株を移す手間と、1〜2か月早く現金になることを天秤にかけて、毎回同じ判断をしました。

いちばん覚えておきたいのは、TOB価格は動くことがあるという点です。ファンケルは2,690円から2,800円へ引き上げられ、芝浦電子は2社の争奪戦になりました。発表された数字がそのまま最後まで続くとは限りません。

50銘柄前後を長く持っていれば、TOBには何度でも出会います。避けられないものなので、来たときに落ち着いて2つだけ確認する。それで十分だと思っています。

この記事で参照した開示資料

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※記載の数値は各社の適時開示および筆者の取引記録にもとづくものです。

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大学生の頃に金融投資を知り、社会人になるタイミングで金融投資を始める。インデックス投資を中心に資産を拡大していき、2023年に高配当株投資とFIREを知り、それをきっかけにFIREを目指すべく高配当株投資を始める。 2024年には月平均5万円の配当金を受け取れるようになり、さらなる配当金の増加に向けて尽力中。
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